密猟1
異変に気付いたのは、ザックに詰めた着衣を欅の大木の枝にかけて7,80メートルも丘を下ったときだった。
冬とはいえ強い陽射しに生身の全身をくまなくさらした解放感で全身に爽気がみなぎっていた。
木々の根方の、ところどころ露出した黒土からは強い日差しに射溶かされた新雪が蒸気となって立ちのぼる。
こごえる足指を激しく曲げ伸ばしてほぐしつつ、ことさらに雪を力強く踏みしめて丘を下った。
見晴らしの良い中腹に膝を折って太陽を仰ぐ。
見はるかす限り四方は新雪を冠った森林。白銀をまとった緑の海原。
おれはここに来るたびにブリューゲルの「雪中の狩人」を想う。
ただ、このカンバスには人家も猟犬も猟師も書きこまれてはいない。
野生の獣のように全裸で寒風を受け止めて、自由にこの無人の天地を楽しむおれがいるだけ。
・・のはずだった。
不意に激しく犬が吠えた。
同時に、丘の右斜め下方100メートルほどの氷結した池を取り巻く杉木立に思いがけず人工的な色彩を認めた。
・・人がいる!
モスグリーンのウインドブレーカーに黄色のゼッケン、オレンジのキャップをかぶった男が身じろいでいる。
男はゆっくりとこちらをふり仰いだ。
(続く・・・かな)

冬とはいえ強い陽射しに生身の全身をくまなくさらした解放感で全身に爽気がみなぎっていた。
木々の根方の、ところどころ露出した黒土からは強い日差しに射溶かされた新雪が蒸気となって立ちのぼる。
こごえる足指を激しく曲げ伸ばしてほぐしつつ、ことさらに雪を力強く踏みしめて丘を下った。
見晴らしの良い中腹に膝を折って太陽を仰ぐ。
見はるかす限り四方は新雪を冠った森林。白銀をまとった緑の海原。
おれはここに来るたびにブリューゲルの「雪中の狩人」を想う。
ただ、このカンバスには人家も猟犬も猟師も書きこまれてはいない。
野生の獣のように全裸で寒風を受け止めて、自由にこの無人の天地を楽しむおれがいるだけ。
・・のはずだった。
不意に激しく犬が吠えた。
同時に、丘の右斜め下方100メートルほどの氷結した池を取り巻く杉木立に思いがけず人工的な色彩を認めた。
・・人がいる!
モスグリーンのウインドブレーカーに黄色のゼッケン、オレンジのキャップをかぶった男が身じろいでいる。
男はゆっくりとこちらをふり仰いだ。
(続く・・・かな)
