密猟2
男はゆっくりとこちらをふり仰いだ。
身をかくす場所などない。
思いもかけない展開におれの思考は全く停止し全身をさらしたまま棒立ちに立ち尽くしていた。
銃を構えたままの男の視線がおれをつらぬくのがわかった。
一瞬の凝視、次の瞬間男はつと視線をそらしてうつむき、そしてかすかに笑った、ように見えた。
少し落ち着きを取り戻したおれの目はようやく男の足元に二頭の犬を認めた。
さっき激しく吠えた黒い猟犬たちはいま静まりかえって時を待っている。
命令一下、鋭い双牙を低く構えて突進してくる猪ののど元に食らいつき、俊足よく懸崖を飛びこえる鹿を追い詰めるために連れてこられた彼らも毛皮もまとわぬ非力な動物を獲物かどうか判断しかねているように見える。
しかし身動きすれば、その野生に火をつけかねない。
冷たい汗がとめどなく吹き出し、寒風にさらしたままの全身を濡らし続けている。
キャップの男が綱を持つ左手をかすかに動かした。
犬が動き出す。
男も静かにこちらに向かって踏み出した。
不思議なことにおれには男の表情がいまや明瞭に見えていた。
錯覚だったかもしれない。
でもおれは確かに、自ら縄張りに飛び込んできた風変わりな獲物を追い詰めるゲームを始めた男の残酷な戯れ心をテレパシーのようにとらえていた。
冷たい微笑をとらえていた。
「狩られる!」
戦慄は、おれの生存本能をようやく呼び覚ました。
(続く・・・のだろうか)

思いもかけない展開におれの思考は全く停止し全身をさらしたまま棒立ちに立ち尽くしていた。
銃を構えたままの男の視線がおれをつらぬくのがわかった。
一瞬の凝視、次の瞬間男はつと視線をそらしてうつむき、そしてかすかに笑った、ように見えた。
少し落ち着きを取り戻したおれの目はようやく男の足元に二頭の犬を認めた。
さっき激しく吠えた黒い猟犬たちはいま静まりかえって時を待っている。
命令一下、鋭い双牙を低く構えて突進してくる猪ののど元に食らいつき、俊足よく懸崖を飛びこえる鹿を追い詰めるために連れてこられた彼らも毛皮もまとわぬ非力な動物を獲物かどうか判断しかねているように見える。
しかし身動きすれば、その野生に火をつけかねない。
冷たい汗がとめどなく吹き出し、寒風にさらしたままの全身を濡らし続けている。
キャップの男が綱を持つ左手をかすかに動かした。
犬が動き出す。
男も静かにこちらに向かって踏み出した。
不思議なことにおれには男の表情がいまや明瞭に見えていた。
錯覚だったかもしれない。
でもおれは確かに、自ら縄張りに飛び込んできた風変わりな獲物を追い詰めるゲームを始めた男の残酷な戯れ心をテレパシーのようにとらえていた。
冷たい微笑をとらえていた。
「狩られる!」
戦慄は、おれの生存本能をようやく呼び覚ました。
(続く・・・のだろうか)
